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風邪っぴき

 「何だというのだ。私が何をしたというのだ。私に恨みでもあるのか。」

そう叫びだしたくなる。私に対する罰だろうか。私に罪があったのだろうか。
 私は酷く苦しんでいる。苦しいのだ。立ち上がれば、頭を押さえつけられて脳みそをグチャグチャにされる。横になってじっとすれば、逃げ場の無い熱に蒸し殺される。熱だ。熱が苦しい。夏の夜の苦しみだ。逃げても逃げても熱は私を逃さない。生ぬるい風が余計に熱を感じさせるのだ。熱はこもって私を蝕む。赤い肉が炎の上で灰色になるところを想像する。私は水を浴びた。すうっと熱が引く。これは気持ちがいい。私は熱から逃れられた。ところがどうだろうか。次は真冬の朝だ。私は道を拓くべく雪かきをしなければならない。冷気のおかげで血管は収縮し、筋肉はこわばる。あぁ、痛い。痛い。寒い。こんなことにはもう耐えられない。脳みそが凍てつく。氷になった脳みそが頭蓋骨をガリガリと削る。痛い。痛い。痛い。身震いが止まらない。布団に入らなければすぐにでも死んでしまうだろう。私は凍死する。しかし、布団に入るとまた熱に蒸し殺されるのだ。
 これは理不尽だ。こんな事は起こってはいけない。自意識過剰な思春期の女に攻め立てられるよりも理不尽だ。夕立に降られてびしょ濡れになるよりも理不尽だ。太陽が眩しすぎたのがいけないのだろうか。いずれにせよ、なぜ私がこのような仕打ちを受けなければいけないのかがまるで理解できない。もっとも、理由がなくてもこのような仕打ちを受けることが当たり前の事なのは理解している。
 
 周りの人間はさも当然のように「風邪を引いた」などと言う。こんなに辛く苦しい理不尽に平然と耐えている(ように見える)。もっと人は苦しい時に苦しいと言うべきだ。そうでなければ私が声を上げにくいではないか。平気そうにしている人間の気が知れない。いいや、きっと彼らも相当苦しんでいるはずだ。人間などというものは本質的にタンパク質と水と少しの鉄でできているし、遺伝子の配列だって9割9分は同じだ。感覚器官の狂った新人類でなければ同じ苦しみを味わっているだろう。だというのに、なぜ平然としているのだろうか。私には理解が及ばない。新人類でなくとも痛みのクオリアが違うとでも言うのだろうか。
 人は風邪を引くと苦しむだろうか。おそらくそれは真だ。風邪を引くと苦しむのは当然だ。風邪を引いて苦しくない人間など居るはずが無い。苦しくない奴がいたとしたら、そいつは強がりというものだ。強がりを認めなければそいつは新人類だ。
 新人類は人間を奴隷のように扱うだろう。苦しみに鈍感な人非人が人間を苦しめるのだ。私はそれを潔しとしない。だから私は苦しみには素直になりたい。
 
 風邪引いたのマジつれぇわ。